訪問看護で使用する保険は「医療保険」「介護保険」の2パターンがあり、
①病名②介護保険の有無③特別訪問看護指示書の有無、の3点で決まります。
利用者が「医療保険」か「介護保険」のどちらを利用するか選ぶ事はできず、訪問看護ステーション側でも選ぶ事はできません。
①病名
通称:別表7に該当するか
別表7とは、厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等)の事です。別表7の内容については後述。
該当すれば全ての方が医療保険での利用になります。
◯必要な事:医師が発行する訪問看護指示書の診断名に別表7が記載されている必要があります。
②特別訪問看護指示書(通称:特指示)
発行されると全ての方が医療保険での利用となります。指示書期間は診療日から14日以内です。
発行の要件は状態の急性増悪や終末期や退院直後など週4回以上の頻回の訪問看護が必要と医師が認めた場合に発行されます。通常は月1回までの発行ですが、気管カニューレを使用している状態や真皮を越える褥瘡の状態の場合は月2回の発行が可能です。
◯必要な事:特指示の書類、発行される前にたいていクリニックから訪問看護に連絡があると思います。「往診に行き状態が悪く点滴をしますので、特指示を出します。」など、連絡が無く特指示だけ届いた場合はクリニックへ一度確認をした方が良いかもしれません。
③介護保険の有無
別表7や特指示に該当しない場合は介護保険をお持ちかどうかで決まります。介護保険証を持っていれば訪問看護派介護保険での利用、介護保険もお持ちで無ければ医療保険での利用になります。
第1号被保険者(65歳以上)は介護保険の利用を申請すれば利用が可能です。
第2号被保険者(40〜65歳)は特定疾病に該当する方は介護保険利用の申請ができ、通れば利用可能です。特定疾病の内容については後述。
40歳以下は介護保険の申請の対象外のため医療保険となります。
介護保険の使用に該当する方でも、あえて利用申請をせず訪問看護を医療保険で利用する場合もごく稀にあります。
◯必要な事:介護保険証と負担割合証の確認
※ケアマネジャーさんでも訪問看護が医療保険になるのか介護保険になるのか間違える事もあります。私達がしっかり把握しましょう。
別表7
①末期の悪性腫瘍②多発性硬化症③重症筋無力症④スモン⑤筋萎縮性側索硬化症⑥脊髄小脳変性症⑦ハンチントン病⑧進行性筋ジストロフィー⑨パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類Ⅲ度以上かつ生活機能障害度がⅡまたはⅢ))⑩多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)11プリオン病12亜急性硬化性全脳炎13ライソゾーム病14副腎白質ジストロフィー15脊髄性筋萎縮症16球脊髄性筋萎縮症17慢性炎症性脱髄性多発神経炎18後天性免疫不全症候群19頸髄損傷20人工呼吸器を使用している状態(ASVは含まれない)
※ここでの注意点
①悪性腫瘍が末期かどうか
悪性腫瘍(例えば「肺癌」)だけの診断名では該当しません。また、ステージⅣ=癌末期の状態とも言えないため、例えば大腸癌・リンパ節転移・骨転移・肺転移であっても「末期状態」と記載が無いと別表7に該当しません。必ず「◯◯癌末期(終末期)」の記載が必要になります。逆に末期状態(手術も化学療法もしません、緩和治療の方針など)なのに診断名に「末期」の機材が無ければ、医師へ確認し指示書へ記載していただくのが良い場合もあります。金銭面や計画変更のスムーズさ(ケアマネジャーを介すかどうか)などで調整する事もあります。
②パーキンソン病
パーキンソン病の場合は必ず「ホーエン・ヤールの重症度分類」「生活機能障害度」の記載が必要です。おそらく訪問看護を依頼する状態の方は、姿勢を保つのが難しくなったり(ホーエン・ヤールの重症度分類のⅢ以上)、生活に何らかの介助が必要(生活機能障害度ⅡまたはⅢ)に当てはまるかと思います。また難病申請ができる状態かと思いますので、難病申請をすると医療費助成制度もあり助成が受けられるため、利用者にとってメリットがあります。
③頸髄損傷
頸髄損傷と頚椎損傷はよく似ていますが、訪問看護の保険制度では両者は大きく異なります。頸髄損傷は医療保険ですが、頚椎損傷の方で介護保険をお持ちの方は介護保険の利用となります。頸髄損傷の方はたいてい心身障害者医療費助成制度(通称:マル障)をお持ちかと思いますので、訪問看護の医療保険も助成の対象です。どちらなのかをしっかりと確認が必要です。
④人工呼吸器を使用している状態(ASVは含まれない)
ASV(アダプティブ・サーボ・ベンチレーション)は睡眠時無呼吸症候群や慢性心不全の方に使用する人工呼吸器のことです。
特定疾病
癌末期・関節リウマチ・筋萎縮性側索硬化症・後縦靭帯骨化症・骨折を伴う骨粗鬆症・初老期における認知症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病・脊髄小脳変性症・脊柱管狭窄症・早老症・多系統萎縮症・糖尿病性疾患(神経障害・腎症・網膜症)・脳血管疾患・閉塞性動脈硬化症・慢性閉塞性肺疾患・両側の膝関節または股関節に著しい変性を伴う変形性関節症
※学生の時に習った記憶があるような…遠い記憶のような…笑
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